「桜の文学史 小川和祐」を読む。
○ 代表歌
あしひきの山桜花日並べてかく咲きたればいと恋ひめやも 山部赤人 万葉集8~1425
いにしへの奈良の都の八重桜今日九重に匂ひぬるかな 伊勢大舗
吹く風を勿来の関と思へども道もせに散る山桜かな 源義家
願はくば花のしたにて春死なむそのきさらぎの望月のころ 西行
清水へ祇園をよぎる桜月夜こよひ逢ひ人みなうつくしき 与謝野晶子
さまざまの事おもひだす桜かな 芭蕉
○ 著者は次の歌を詩情に乏しいイデオロギー歌であると評する。太平洋戦争の時代日本軍の好きな歌であった。この歌を旨とし散った特攻隊員を悼む。
「敷島の大和心を人とはば朝日に匂ふ山桜花 本居宣長」
○ 桜と深いかかわりを持つ日本文化。桜がどのように文学上のテーマ、モチーフを形づくってきたかを、古事記や日本書紀、万葉集から現代の渡辺淳一まで丹念にたどりながら、日本人の心や文化に、梅や菊とも異なる、大きな影響を与えるに至った経緯を解き明かす。
○ 日本文学で語られる桜は実は「染井吉野」ではなく、「山桜」である事を予め知っておこう。
○ 17歳海軍予備学生に志願し特攻隊隊に配属された城山三郎氏には、桜は心の傷であった。散る桜花に特攻隊の散華を重ね見、桜を避けるようにして生きてこられた。しかし、著者の文章によって見方が少し変わったという。
○ 散る花に日本人を重ねた桜観は、歌舞伎などの芸能を除いては、実は戦時中のわずかな期間しかない。
万葉の世から脈々と受け継いできた桜に対する日本人の愛情は、「潔さ」とはかけ離れた、美しく可憐かつ切ない、人を慈しみ愛する心と似ていることを教えられる。
○ 桜といえば「染井吉野」に代表されるように現代人は感じているだろうが、それもほんの最近のことである。
2018年6月7日木曜日
「桜の文学史 小川和祐」を読む。 ○ 代表歌 あしひきの山桜花日並べてかく咲きたればいと恋ひめやも 山部赤人 万葉集8~1425 いにしへの奈良の都の八重桜今日九重に匂ひぬるかな 伊勢大舗 吹く風を勿来の関と思へども道もせに散る山桜かな 源義家 願はくば花のしたにて春死なむそのきさらぎの望月のころ 西行 清水へ祇園をよぎる桜月夜こよひ逢ひ人みなうつくしき 与謝野晶子 さまざまの事おもひだす桜かな 芭蕉 ○ 著者は次の歌を詩情に乏しいイデオロギー歌であると評する。太平洋戦争の時代日本軍の好きな歌であった。この歌を旨とし散った特攻隊員を悼む。 「敷島の大和心を人とはば朝日に匂ふ山桜花 本居宣長」 ○ 桜と深いかかわりを持つ日本文化。桜がどのように文学上のテーマ、モチーフを形づくってきたかを、古事記や日本書紀、万葉集から現代の渡辺淳一まで丹念にたどりながら、日本人の心や文化に、梅や菊とも異なる、大きな影響を与えるに至った経緯を解き明かす。 ○ 日本文学で語られる桜は実は「染井吉野」ではなく、「山桜」である事を予め知っておこう。 ○ 17歳海軍予備学生に志願し特攻隊隊に配属された城山三郎氏には、桜は心の傷であった。散る桜花に特攻隊の散華を重ね見、桜を避けるようにして生きてこられた。しかし、著者の文章によって見方が少し変わったという。 ○ 散る花に日本人を重ねた桜観は、歌舞伎などの芸能を除いては、実は戦時中のわずかな期間しかない。 万葉の世から脈々と受け継いできた桜に対する日本人の愛情は、「潔さ」とはかけ離れた、美しく可憐かつ切ない、人を慈しみ愛する心と似ていることを教えられる。 ○ 桜といえば「染井吉野」に代表されるように現代人は感じているだろうが、それもほんの最近のことである。
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