歳時記秋11
塾を出る一人一人に秋の暮 鈴木滋三
蟻のむれいづれもつれづれ法師なり 那珂太郎
まぼろしが猿の腰掛に座してをり 那珂太郎
眠られぬ薄明のなか雁わたる 那珂太郎
老骨のおきどころなし後の月 那珂太郎
人の世の燈も寒々と河豚の宿 那珂太郎
噛ききれぬするめのごときかなしみぞ 那珂太郎
はるかなる潮干のはての白帆舟 那珂太郎
勢州の島串刺しに鷹渡る 中山暁代
月光の穿つ岩湯に下りんとす 山口草堂
青みかん乙女ごころの抜けきらず 杉口麗泉
蘭の香も閑を破るに似たりけり 青蘿
流離ひて花野に辿りつにけり 寺田すず江
一瞬の青の走れり竹を伐る 吉武千束
秋冷や昨日の仕事が枕元 中村慶岳
新藁を干して一村かがやけり 川崎陽子
山は陽を障子は山を消しにけり 小宅容義
夕焼けてあはれ未完砂の城 小寺敬子
物隠す魔もの棲みをる残暑かな 鍵和田柚子
秋暑し水垢かき丹生の里 長田久子
きぬかつぎ嘆いたあとのよい気持 池田澄子
純粋な主人が好きなまくはうり 中村文
露の音虫の音色に替りけり 井月
身にあたる風に気の付く後の月 井月
朝寒や豆腐の外に何もなし 井月
無花果を割れば無数の未来あり 小林凛
靴底に踏む里山の胡桃かな 三浦典子
働かぬ日は秋風の虜かな 島谷征良
山の木を振ればからから山の種 柿本多映
奥深き風の宮より秋のこゑ 積木道代
山頂の更に高みへ秋燕 川口和代
菊の香やならには古き仏達 芭蕉
たましひのしずかにうつる菊見かな 飯田蛇笏
よきことば生まれよと秋立ちにけり 長谷川櫂
月の人のひとりとならむ車椅子 角川源義
菊膾おのれ暮れゆく時間あり 向原常美
午後からは生絹の雨や新豆腐 藤岡勢伊自
神保町に日暮れまでゐて西鶴忌 大友盛男
浜焚火かつては船でありしもの 大島雄作
死に方をみんなで誉めて菊膾 円城寺龍
ちぎりなきかたみに渋き柿二つ 丈草
巫女となる教へ子走る運動会 橋本きいち
打ちみだれ片乳白き砧かな 泉鏡花
青空と大き川あり小鳥来る 曽根京子
北嵯峨や町を打越す鹿の声 丈草
一つ置く湯呑みの影の夜長かな 深見けん二
抓みたるすいとの緑やはらかし 中本憲己
妻がゐて子がゐて孤独いわし雲 安住淳
鰯雲わが家の売値広告に 宮崎茂子
十人は鱸は刎る鰡は飛ぶ 宇佐美魚目
南縁や柚子百なりの木の主 宇佐美魚目
すべりくる舟のありけり紅葉鮒 宇佐美魚目
蟋蟀や火の中のもの強く反り 宇佐美魚目
秋燕や高齢にして見ゆるもの 宇佐美魚目
日々水に映りていろのきたる柿 宇佐美魚目
青き葉も落ちくる不思議月のあと 宇佐美魚目
どの道をとるも月光栗の毬 宇佐美魚目
御遷宮圓くて満つるもの遷す 山口誓子
人涼し河馬に似てゐるなどと言はれ 後藤比奈夫
松茸を焼くに並々ならざる火 後藤比奈夫
秋ざくら倉庫とともに運河古る 赤塚五行
家持の海うつくしき秋桜三谷いちろ
我のみは涼しく聞くや蝉の声 吉田大八
夜の巨人ぎしぎしぎしと渡河厚氷 依田明倫
草の香の秋の昼寝となりにけり 星野繭
芋を食べ秋水を飲み清浄身 山陰石楠
青空をけふ渡り来しサシバかな 田中政子
神饌は目の澄む真鯛守武忌 池田緑人
枝豆の皮やそろそろ話尽き 高橋桃衣
無惨なら枯向日葵に劣らざる 中原道夫
土 放浪の俳人、種田山頭火(1882〜1940)が親友に宛てたは がきを、熊本市在住の親友の子孫が、熊本近代文学館(熊本市中央区)に寄贈し た。同館によると「山頭火全集」にも収蔵されておらず、研究者の間でも知られて いなかったという。14日から同館で公開される。
はがきは計9枚。山頭火が九州を巡った旅の途中で、熊本市の友枝寥平(りょう へい)氏に宛てている。「何といっても行乞(ぎょうこつ)ハ辛(つら)い」と旅 の苦労をぼやいている一節もある。 くれを生活に伊賀のしぐれ里 橋爪貴子
恐竜の全き骨の秋思かな 遠藤正恵
たばこよりはかなき桐の一葉哉 支考
中学の制服見せに墓参り 小寺玲菜
泳ぎゆく我も一点海の碧 坂本茉莉
裏散つ表もちりつもミぢ哉 木因
暁や灰の中よりきりぎりす 淡々
大かたの月をもめでし七十二 任口
白露や無分別なるおき処 宗因
名月と今宵生るゝ子もあらん 信徳
月やあらぬ我身ひとつの影法師 貞徳
松原へ落込む音や天の河 門瑟
たもとまで入みだれたるはな野哉 紹巴
市売の鮒に柳のちる日哉 長翠
女郎花たとへばあはの内侍かな 季吟
秋立つやあつたら口へ風の吹 一茶
星のとぶもの音もなし芋の上 阿波野青畝
硝子(びいどろ)の魚おどろきぬ今朝の秋 蕪村
朝顔の海のごときを徒渡る 岩岡中正
朝顔やかしやかしや溶くきて卵焼 橋田敬子
蕣や天の始まりビッグバン 山田正雄
朝顔の笑顔の先に又笑顔 増山英
朝顔や理系の姉に恋一つ 平林啓子
朝顔に水やつでいるちゃんこ番 古賀勇理央
朝顔の正直者に水をやる 勝正
この頃の蕣藍に定まりぬ 正岡子規
朝顔や木曾の旅籠の黒格子」 高杉光昭」
百歳は僕の十倍天高し 小林凛
紅葉で神が染めたる天地かな 小林凛
なつかしきしをにがもとの野菊哉 蕪村
鉄鉄鉄秋日鉄鉄塔となす 小澤實
爽やかに俳句の神に愛されて 田中裕明
十六夜に夫を身籠りゐたるなり 秦夕美
子にみやげなき秋の夜の肩ぐるま 能村登四郎
むさしのの空真青なる落葉かな 水原秋桜子
コスモスや子がくちずさむ中也の詩 大島民郎
石榴赤しふるさと人の心はも 高浜虚子
くわりんの実越えきし山の風のいろ 原裕
垣外のよその話も良夜かな 富安風生
秋深き隣は何をする人ぞ 芭蕉
雁や太陽がゆき月がゆき 長谷川櫂
わがいのち菊にむかひてしづかなる 水原秋桜子
ふいふいと消えて仕舞ふや秋の雲 三遊亭園朝
赤富士に露滂沱なる四辺かな 富安風生
蝉鳴くや六月村の炎天寺 一茶
鉢二つ呉れてやりけり野分過ぎぐ 関根空
御敷地の 磴 新しく木の実落つ 津田寿美
魚よりも魚影濃き池水澄めり 関山美代子
鵙の贄より大気乾きゆく 角谷晶子
0 件のコメント:
コメントを投稿