2014年10月11日土曜日

歳時記秋

歳時記秋11

塾を出る一人一人に秋の暮 鈴木滋三

蟻のむれいづれもつれづれ法師なり 那珂太郎

まぼろしが猿の腰掛に座してをり 那珂太郎

眠られぬ薄明のなか雁わたる  那珂太郎

老骨のおきどころなし後の月  那珂太郎

人の世の燈も寒々と河豚の宿  那珂太郎

噛ききれぬするめのごときかなしみぞ  那珂太郎

はるかなる潮干のはての白帆舟  那珂太郎

勢州の島串刺しに鷹渡る    中山暁代

月光の穿つ岩湯に下りんとす   山口草堂

青みかん乙女ごころの抜けきらず 杉口麗泉

蘭の香も閑を破るに似たりけり  青蘿

流離ひて花野に辿りつにけり  寺田すず江

一瞬の青の走れり竹を伐る  吉武千束

秋冷や昨日の仕事が枕元 中村慶岳

新藁を干して一村かがやけり  川崎陽子

山は陽を障子は山を消しにけり  小宅容義

夕焼けてあはれ未完砂の城  小寺敬子

物隠す魔もの棲みをる残暑かな 鍵和田柚子

秋暑し水垢かき丹生の里  長田久子

きぬかつぎ嘆いたあとのよい気持  池田澄子

純粋な主人が好きなまくはうり  中村文


露の音虫の音色に替りけり  井月

身にあたる風に気の付く後の月  井月

朝寒や豆腐の外に何もなし  井月

無花果を割れば無数の未来あり  小林凛

靴底に踏む里山の胡桃かな  三浦典子

働かぬ日は秋風の虜かな   島谷征良

山の木を振ればからから山の種 柿本多映

奥深き風の宮より秋のこゑ  積木道代

山頂の更に高みへ秋燕    川口和代

菊の香やならには古き仏達  芭蕉

たましひのしずかにうつる菊見かな  飯田蛇笏

よきことば生まれよと秋立ちにけり  長谷川櫂

月の人のひとりとならむ車椅子  角川源義

菊膾おのれ暮れゆく時間あり  向原常美

午後からは生絹の雨や新豆腐  藤岡勢伊自

神保町に日暮れまでゐて西鶴忌 大友盛男

浜焚火かつては船でありしもの  大島雄作

死に方をみんなで誉めて菊膾  円城寺龍

ちぎりなきかたみに渋き柿二つ  丈草

巫女となる教へ子走る運動会  橋本きいち


打ちみだれ片乳白き砧かな  泉鏡花

青空と大き川あり小鳥来る  曽根京子

北嵯峨や町を打越す鹿の声  丈草

一つ置く湯呑みの影の夜長かな 深見けん二

抓みたるすいとの緑やはらかし  中本憲己

妻がゐて子がゐて孤独いわし雲 安住淳

鰯雲わが家の売値広告に 宮崎茂子

十人は鱸は刎る鰡は飛ぶ 宇佐美魚目

南縁や柚子百なりの木の主 宇佐美魚目

すべりくる舟のありけり紅葉鮒  宇佐美魚目

蟋蟀や火の中のもの強く反り 宇佐美魚目

秋燕や高齢にして見ゆるもの  宇佐美魚目

日々水に映りていろのきたる柿 宇佐美魚目

青き葉も落ちくる不思議月のあと  宇佐美魚目

どの道をとるも月光栗の毬 宇佐美魚目

御遷宮圓くて満つるもの遷す  山口誓子

人涼し河馬に似てゐるなどと言はれ  後藤比奈夫

松茸を焼くに並々ならざる火     後藤比奈夫


秋ざくら倉庫とともに運河古る  赤塚五行

家持の海うつくしき秋桜三谷いちろ

我のみは涼しく聞くや蝉の声 吉田大八

夜の巨人ぎしぎしぎしと渡河厚氷  依田明倫

草の香の秋の昼寝となりにけり  星野繭

芋を食べ秋水を飲み清浄身  山陰石楠

青空をけふ渡り来しサシバかな  田中政子

神饌は目の澄む真鯛守武忌 池田緑人

枝豆の皮やそろそろ話尽き  高橋桃衣

無惨なら枯向日葵に劣らざる 中原道夫

土 放浪の俳人、種田山頭火(1882〜1940)が親友に宛てたは がきを、熊本市在住の親友の子孫が、熊本近代文学館(熊本市中央区)に寄贈し た。同館によると「山頭火全集」にも収蔵されておらず、研究者の間でも知られて いなかったという。14日から同館で公開される。


はがきは計9枚。山頭火が九州を巡った旅の途中で、熊本市の友枝寥平(りょう へい)氏に宛てている。「何といっても行乞(ぎょうこつ)ハ辛(つら)い」と旅 の苦労をぼやいている一節もある。 くれを生活に伊賀のしぐれ里 橋爪貴子

恐竜の全き骨の秋思かな 遠藤正恵

たばこよりはかなき桐の一葉哉 支考

中学の制服見せに墓参り 小寺玲菜

泳ぎゆく我も一点海の碧  坂本茉莉

裏散つ表もちりつもミぢ哉  木因

暁や灰の中よりきりぎりす 淡々

大かたの月をもめでし七十二  任口

白露や無分別なるおき処  宗因

名月と今宵生るゝ子もあらん  信徳

月やあらぬ我身ひとつの影法師 貞徳

松原へ落込む音や天の河 門瑟

たもとまで入みだれたるはな野哉 紹巴

市売の鮒に柳のちる日哉 長翠

女郎花たとへばあはの内侍かな  季吟

秋立つやあつたら口へ風の吹 一茶

星のとぶもの音もなし芋の上  阿波野青畝

硝子(びいどろ)の魚おどろきぬ今朝の秋  蕪村

朝顔の海のごときを徒渡る    岩岡中正

朝顔やかしやかしや溶くきて卵焼   橋田敬子

蕣や天の始まりビッグバン     山田正雄

朝顔の笑顔の先に又笑顔  増山英

朝顔や理系の姉に恋一つ  平林啓子

朝顔に水やつでいるちゃんこ番  古賀勇理央

朝顔の正直者に水をやる    勝正

この頃の蕣藍に定まりぬ   正岡子規

朝顔や木曾の旅籠の黒格子」 高杉光昭」

百歳は僕の十倍天高し     小林凛

紅葉で神が染めたる天地かな   小林凛

なつかしきしをにがもとの野菊哉 蕪村

鉄鉄鉄秋日鉄鉄塔となす 小澤實

爽やかに俳句の神に愛されて 田中裕明

十六夜に夫を身籠りゐたるなり 秦夕美

子にみやげなき秋の夜の肩ぐるま 能村登四郎

むさしのの空真青なる落葉かな 水原秋桜子

コスモスや子がくちずさむ中也の詩 大島民郎

石榴赤しふるさと人の心はも 高浜虚子

くわりんの実越えきし山の風のいろ 原裕

垣外のよその話も良夜かな 富安風生

秋深き隣は何をする人ぞ 芭蕉

雁や太陽がゆき月がゆき 長谷川櫂

わがいのち菊にむかひてしづかなる 水原秋桜子

ふいふいと消えて仕舞ふや秋の雲 三遊亭園朝

赤富士に露滂沱なる四辺かな  富安風生

蝉鳴くや六月村の炎天寺  一茶

鉢二つ呉れてやりけり野分過ぎぐ      関根空

御敷地の 磴 新しく木の実落つ 津田寿美

魚よりも魚影濃き池水澄めり  関山美代子

鵙の贄より大気乾きゆく  角谷晶子

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