2014年10月25日土曜日

「男どき女どき 向田邦子」を読む。

「男どき女どき 向田邦子」を読む。この本は向田邦子さんの心に沁みる愛に溢れた短編小説集です。 ○この本の名は世阿弥の「風姿花伝」から取られました。 「時の間にも男時、女時とてあるべし。いかにすれども、能にも、よき時あれば、かならず、また、悪き事またあるべし。」 ○向田邦子さんは男女の関係も良い時も悪い時もある。また 男女の関係を織物に例えているように思う。  縦糸、横糸がありお互いに絡んで一枚の織物が出来上がるようだと言るようだ。 ○感激した小説「ゆでたまご」 向田邦子さんが小学生4年の時、クラスに片足の悪い子がいました。 この子は足だけではなく、片目も不自由でした。 背も飛びぬけて低く、何もかも苦手で、暮らし向きもよくないようで、 性格もひねくれているようでした。 ある秋の遠足のとき、この子のお母さんが級長をしていた向田さんに、 「これみんなで」と、ゆでたまごの入った風呂敷を押し付けて、ゆでたまご」 帰っていったことがありました。 向田さんは言います。 「私は愛という字をみていると、なぜかこの時のねずみ色の汚れた風呂敷とポカポカとあたたかいゆでたまごのぬく味と、いつまでも見送っていた母親の姿を思い出してしまうのです。」 この子にはまた違うエピソードがありました。 運動会の時、みんな走り終えて、足の不自由なこの子は走るのをあきらめそうになりました。 そのとき、飛び出して一緒にゆっくり走り出した先生がいたのです。 その先生は、普段は小言が多くて気難しく、学校中で一番嫌われていたそうです。 先生はこの子を抱えるようにして校長先生のところに連れて行き、一緒に鉛筆をもらったということでした。 向田さんは、「愛という字の連想には、この光景も浮かんできます」とも言っています。

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