2018年7月14日土曜日

「キメラ 満州国の肖像 山室信一」を読む。 ○ 満州国を獅子の頭と羊の肢体を持つ怪物キメラに見立てて、その異様な怪物(満州国)の生涯を詳細かつ客観的に記した学術書である。 ○ 石原莞爾の主導した満州事変をきっかけに行った満州国の建国では「王道楽土」、「五族協和」をスローガンとし、満蒙領有論から満蒙独立論へ転向していく。日本人も国籍を離脱して満州人になるべきだと語ったように、石原が構想していたのは日本及び中国を父母とした独立国(「東洋のアメリカ」)であった。 ○ しかし、その実は、石原独自の構想である最終戦争たる日米決戦に備えるための第一段階であり、それを実現するための民族協和であったと指摘される。 ○ 従って満州国は満州事変、支那事変、太平洋戦争の流れで考察しなければならない。 ○ 一般に知られている満州事変から建国に至る経緯においても、その裏側でうごめく様々な人間模様(関東軍、溥儀はじめ旧清朝の廷臣ら、満州青年連盟、群雄割拠を嫌う現地中国人等)が詳細に述べられており、満州国と一口に言っても、その13年間にあらゆる幻影が錯綜していた。 ○ そして生みの親とも言うべき石原莞爾の手から離れ、ますます怪物化していくキメラは、建国の理念であった「王道楽土」「五族協和」を忘れ、日本人自身も訝しむほどの、日本人の驕りと高慢な態度がキメラを蝕んでいった。 ○ 満州国は日本人と一緒に夢を見た中国人や朝鮮人に対する裏切りであり、これはまさしく悲劇と呼べるだろう。 ○ また作者は、そんな満州の影を詳細に述べながらも、所謂日本中心の高邁な理念は、当時帝国主義がはびこっていた世界情勢において新鮮であるかに見え、被征服民族の希望となっていた点についても評価しており、一辺倒な書き方でない点が、我々に客観的な視点を維持するかに見えた。

「キメラ 満州国の肖像 山室信一」を読む。
○ 満州国を獅子の頭と羊の肢体を持つ怪物キメラに見立てて、その異様な怪物(満州国)の生涯を詳細かつ客観的に記した学術書である。
○ 石原莞爾の主導した満州事変をきっかけに行った満州国の建国では「王道楽土」、「五族協和」をスローガンとし、満蒙領有論から満蒙独立論へ転向していく。日本人も国籍を離脱して満州人になるべきだと語ったように、石原が構想していたのは日本及び中国を父母とした独立国(「東洋のアメリカ」)であった。
○ しかし、その実は、石原独自の構想である最終戦争たる日米決戦に備えるための第一段階であり、それを実現するための民族協和であったと指摘される。
○ 従って満州国は満州事変、支那事変、太平洋戦争の流れで考察しなければならない。
○ 一般に知られている満州事変から建国に至る経緯においても、その裏側でうごめく様々な人間模様(関東軍、溥儀はじめ旧清朝の廷臣ら、満州青年連盟、群雄割拠を嫌う現地中国人等)が詳細に述べられており、満州国と一口に言っても、その13年間にあらゆる幻影が錯綜していた。
○ そして生みの親とも言うべき石原莞爾の手から離れ、ますます怪物化していくキメラは、建国の理念であった「王道楽土」「五族協和」を忘れ、日本人自身も訝しむほどの、日本人の驕りと高慢な態度がキメラを蝕んでいった。
○ 満州国は日本人と一緒に夢を見た中国人や朝鮮人に対する裏切りであり、これはまさしく悲劇と呼べるだろう。
○ また作者は、そんな満州の影を詳細に述べながらも、所謂日本中心の高邁な理念は、当時帝国主義がはびこっていた世界情勢において新鮮であるかに見え、被征服民族の希望となっていた点についても評価しており、一辺倒な書き方でない点が、我々に客観的な視点を維持するかに見えた。

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