2016年11月13日日曜日

「青春の文語体 安野光雅」を読む。
○ 著者安野光雅さんは画家として有名だ。その上エッセイストとして軽妙だ。今回は珠玉の文語体の素晴らしさを語りかける。今も短歌、俳句の世界では文語体は健在である。 私たちも声を出して文語を読もう。

○ 「初恋  島崎藤村」
まだあげ初めし前髪の
林檎のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛(はなぐし)の
花ある君と思ひけり

○ 故郷 高野辰之
兎追ひしかの山
小鮒釣りしかの川
夢は今もめぐりて
忘れがたき故郷
○ 石川啄木
やはらかに柳あおめる
北上の岸辺目に見ゆ
泣けとごとくに

○秋山真之日露戦争、聯合艦隊参謀
敵艦見ユトノ警報に接シ聯合艦隊ハ直に出動、之ヲ撃滅セントス。本日天気晴朗ナレドモ浪高シ。

○ 君死にたまふことなかれ 与謝野晶子
あゝをとうとよ、君を泣く、
君死にたまふことなかれ、
末に生れし君なれば
親のなさけはまさりしも、
親は刃(やいば)をにぎらせて
人を殺せとをしへしや、
人を殺して死ねよとて
二十四までをそだてしや。

○ 安野さんは森鴎外の「即興詩人」を絵本に編纂して現代に蘇らせた。それから1年、今回、この本で安野さんは、文語文の詩歌や散文を選び出し、それらと安野さんとの関わりなどを交えて語っている。
○ 文語作品の選び方と解説の内容のみならず、本の装丁、特にカバーの絵、書名の浮き上がった活字など、内容とマッチして、本として素晴らしい出来映えと言えるかもしれない。

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