2018年7月16日月曜日

「蕪村春秋 高橋治」を読む。 ○ 与謝蕪村(1716 ~ 1784)は絵を描くように俳句を詠み、俳句を詠むように絵を描いた芸術家である。京都の雪景色を描いた晩年の最高傑作「夜色楼台図」は国宝に指定されいる。 ○ 与謝蕪村の俳句を中心にその文学を語りつくした決定版といってよい本である。 朝日新聞日曜版に1993年1月から1995年3月まで連載された記事を纏めた書である。本書はそれに加筆訂正を行ったものである。 ○ 著者は蕪村を映像詩人と捉え、その作品の素晴らしさをカメラの動きやレンズの選択に例えた、映画畑出身の著者らしい解説が秀逸だ。 また、蕪村の俳句は人間賛歌の文学であるとして写生を至上とする俳句よりいかに優れているかを説く著者の俳句観には大いに共感する。 ○ 季語毎に章が立てられ、日本の四季を二巡りする構成となっており、蕪村の句で日本の自然の美を語る書ともなっている。 ○ 最後に、蕪村独自の文学の高みといってよい「北寿老仙をいたむ」、「春風馬堤曲」も採り上ている。それら作品を含め、蕪村文学の全体像をつかむことができる素晴らしい本である。 代表俳句 春の海 終日(ひねもす)のたりのたり哉 柳散り清水涸れ石処々 鳥羽殿へ五六騎いそぐ野分かな 花いばら故郷の路に似たるかな 不二ひとつうづみのこして若葉かな 牡丹散りて打かさなりぬ二三片 夏河を越すうれしさよ手に草履 ゆく春やおもたき琵琶の抱心 易水にねぶか流るゝ寒かな 月天心貧しき町を通りけり さみだれや大河を前に家二軒 菜の花や月は東に日は西に 笛の音に波もよりくる須磨の秋 涼しさや鐘をはなるゝかねの声 稲妻や波もてゆへる秋津しま ところてん逆しまに銀河三千尺 古庭に茶筌花さく椿かな ちりて後おもかげにたつぼたん哉 あま酒の地獄もちかし箱根山 鰒汁の宿赤々と燈しけり 二村に質屋一軒冬こだち 御火焚や霜うつくしき京の寒月や門なき寺の天高し さくら散苗代水や星月夜 住吉に天満神のむめ咲ぬ 秋の夜や古き書読む南良法師 朝霧や村千軒の市の音 ー休み日や鶏なく村の夏木立 帰る雁田ごとの月の曇る夜に うつつなきつまみ心の胡蝶かな 雪月花つゐに三世の契かな 朝顔や一輪深き淵の色

「蕪村春秋 高橋治」を読む。
○ 与謝蕪村(1716 ~ 1784)は絵を描くように俳句を詠み、俳句を詠むように絵を描いた芸術家である。京都の雪景色を描いた晩年の最高傑作「夜色楼台図」は国宝に指定されいる。
○ 与謝蕪村の俳句を中心にその文学を語りつくした決定版といってよい本である。
朝日新聞日曜版に1993年1月から1995年3月まで連載された記事を纏めた書である。本書はそれに加筆訂正を行ったものである。
○ 著者は蕪村を映像詩人と捉え、その作品の素晴らしさをカメラの動きやレンズの選択に例えた、映画畑出身の著者らしい解説が秀逸だ。
また、蕪村の俳句は人間賛歌の文学であるとして写生を至上とする俳句よりいかに優れているかを説く著者の俳句観には大いに共感する。
○ 季語毎に章が立てられ、日本の四季を二巡りする構成となっており、蕪村の句で日本の自然の美を語る書ともなっている。
○ 最後に、蕪村独自の文学の高みといってよい「北寿老仙をいたむ」、「春風馬堤曲」も採り上ている。それら作品を含め、蕪村文学の全体像をつかむことができる素晴らしい本である。
代表俳句
春の海 終日(ひねもす)のたりのたり哉
柳散り清水涸れ石処々
鳥羽殿へ五六騎いそぐ野分かな
花いばら故郷の路に似たるかな
不二ひとつうづみのこして若葉かな
牡丹散りて打かさなりぬ二三片
夏河を越すうれしさよ手に草履
ゆく春やおもたき琵琶の抱心
易水にねぶか流るゝ寒かな
月天心貧しき町を通りけり
さみだれや大河を前に家二軒
菜の花や月は東に日は西に
笛の音に波もよりくる須磨の秋
涼しさや鐘をはなるゝかねの声
稲妻や波もてゆへる秋津しま
ところてん逆しまに銀河三千尺
古庭に茶筌花さく椿かな
ちりて後おもかげにたつぼたん哉
あま酒の地獄もちかし箱根山
鰒汁の宿赤々と燈しけり
二村に質屋一軒冬こだち
御火焚や霜うつくしき京の寒月や門なき寺の天高し
さくら散苗代水や星月夜
住吉に天満神のむめ咲ぬ
秋の夜や古き書読む南良法師
朝霧や村千軒の市の音
ー休み日や鶏なく村の夏木立
帰る雁田ごとの月の曇る夜に
うつつなきつまみ心の胡蝶かな
雪月花つゐに三世の契かな
朝顔や一輪深き淵の色

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