2018年7月17日火曜日

「別冊太陽 江戸琳派の美 岡野智子監修」を読む。 ○ 江戸琳派とは何か。 尾形光琳を祖と仰ぎ、大和絵の伝統を基盤として、豊かな装飾性・デザイン性をもち、絵画を中心として書や工芸を統括する総合性、家系ではなく私淑による断続的な継承、などが特質として挙げられる。 尾方光琳が俵屋宗達に、酒井抱一が尾形光琳にそれぞれ傾倒し、その影響を受けている。琳派では時間や場所、身分が遠く離れた人々によって受け継がれたのは、他に類を見ない特色である。 ○ 私は美術館で数々の江戸琳派の作品を観賞したが、この本により感激を新たにした。 ○ 監修の細見美術館上席研究員の岡野智子氏による冒頭の「風趣を紡ぐ 江戸琳派への誘い」で、京都琳派と江戸琳派の流れと特徴を俯瞰して示している。同じく岡野さんの「幕末・明治の江戸琳派の諸相」で、抱一の没後の其一派の台頭、そして様々な絵師による多様性を、作品とともに紹介して知られざる作品の多い江戸琳派を分かりやすく提示されている。 ○ 岡野氏以外に、千葉市美術館学芸係長の松尾知子氏など、江戸琳派研究に関わってきた美術史家の方の詳しい解説があり、その作品を始めて観賞する人にもわかりやすいものとなっている。 ○ 池田弧邨の作品で、表が「紅葉に流水図屏風」、裏が「山水図屏風」となっているフリーア美術館蔵の作品に惹かれました。表も裏も素晴らしい作品なのは当然なのですが、描き方が全く違い、両方を一人の絵師が描いたということに驚く。 ○ 酒井抱一(1761~1828)は江戸琳派を隆盛に導いた。 琳派の絵画展では必ずその作品が展示されるという江戸琳派の後期を代表する酒井抱一の代表作をここでは見ることができる。 酒井抱一は譜代大名の家柄に生まれながら、30代で城を離れ出家し、いわゆる隠遁生活を送りながら好きな絵画と俳句の世界に身を投じた酒井抱一の生きかたは現代人にとっても羨ましい。その素敵な作品群に感嘆する。 ○ 鈴木其一(1796〜1858)の作品で根津美術館蔵の「夏秋渓流図屏風」の素晴らしさは、時代を超えて評価されていく作品であろう。この構図、描き方など、幕末期とはいえ、江戸時代の絵画とは思えない大胆さと奇抜さが伝わる。それでいて他の作品では琳派の継承者としての作風が色濃く感じられ、多様性が伝わる。 ○ 「水辺家鴨図屏風(細見美術館蔵)」は現代人の美意識や感性に訴えるものが強く内在している。 「朝顔図屏風」はメトロポリタン美術館蔵の作品である。大胆な構図ですし、ポップアートのような趣が伝わる作品です見事と言う他はない。江戸琳派の素晴らしさを外国目のコレクターの方がしっかりと理解していたわけである。いずれの作品も発色がよく、作成当時の色合いが伝わってくる。このような出版が江戸琳派の魅力を多くの人に知らしめている。

「別冊太陽 江戸琳派の美 岡野智子監修」を読む。
○ 江戸琳派とは何か。
尾形光琳を祖と仰ぎ、大和絵の伝統を基盤として、豊かな装飾性・デザイン性をもち、絵画を中心として書や工芸を統括する総合性、家系ではなく私淑による断続的な継承、などが特質として挙げられる。
尾方光琳が俵屋宗達に、酒井抱一が尾形光琳にそれぞれ傾倒し、その影響を受けている。琳派では時間や場所、身分が遠く離れた人々によって受け継がれたのは、他に類を見ない特色である。
○ 私は美術館で数々の江戸琳派の作品を観賞したが、この本により感激を新たにした。
○ 監修の細見美術館上席研究員の岡野智子氏による冒頭の「風趣を紡ぐ 江戸琳派への誘い」で、京都琳派と江戸琳派の流れと特徴を俯瞰して示している。同じく岡野さんの「幕末・明治の江戸琳派の諸相」で、抱一の没後の其一派の台頭、そして様々な絵師による多様性を、作品とともに紹介して知られざる作品の多い江戸琳派を分かりやすく提示されている。
○ 岡野氏以外に、千葉市美術館学芸係長の松尾知子氏など、江戸琳派研究に関わってきた美術史家の方の詳しい解説があり、その作品を始めて観賞する人にもわかりやすいものとなっている。
○ 池田弧邨の作品で、表が「紅葉に流水図屏風」、裏が「山水図屏風」となっているフリーア美術館蔵の作品に惹かれました。表も裏も素晴らしい作品なのは当然なのですが、描き方が全く違い、両方を一人の絵師が描いたということに驚く。
○ 酒井抱一(1761~1828)は江戸琳派を隆盛に導いた。
琳派の絵画展では必ずその作品が展示されるという江戸琳派の後期を代表する酒井抱一の代表作をここでは見ることができる。
酒井抱一は譜代大名の家柄に生まれながら、30代で城を離れ出家し、いわゆる隠遁生活を送りながら好きな絵画と俳句の世界に身を投じた酒井抱一の生きかたは現代人にとっても羨ましい。その素敵な作品群に感嘆する。
○ 鈴木其一(1796〜1858)の作品で根津美術館蔵の「夏秋渓流図屏風」の素晴らしさは、時代を超えて評価されていく作品であろう。この構図、描き方など、幕末期とはいえ、江戸時代の絵画とは思えない大胆さと奇抜さが伝わる。それでいて他の作品では琳派の継承者としての作風が色濃く感じられ、多様性が伝わる。
○ 「水辺家鴨図屏風(細見美術館蔵)」は現代人の美意識や感性に訴えるものが強く内在している。
「朝顔図屏風」はメトロポリタン美術館蔵の作品である。大胆な構図ですし、ポップアートのような趣が伝わる作品です見事と言う他はない。江戸琳派の素晴らしさを外国目のコレクターの方がしっかりと理解していたわけである。いずれの作品も発色がよく、作成当時の色合いが伝わってくる。このような出版が江戸琳派の魅力を多くの人に知らしめている。

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