「世界史で読み解けば日本史がわかる 神野正史」を読む。
著者は縄文時代から太平洋戦争までの日本史の事象を取り上げ、単に日本国内だけの出来事としてとらえず、そこへ至るまでの世界情勢の影響をつまびらかにしていきます。
○ 大陸からの農業伝来が日本人の自然観を大きく変えた。
1万2000年も継続された縄文時代は、原始的で遅れた未開社会だったわけではなく、変革を必要としない平和で豊かな時代だった。身分差を表すものや外敵から村落を守る防御施設も出土していない。
しかし大陸から渡来した弥生人が、共同体全体の一斉作業を必要とする農耕を持ち込んだため、指導者である「王」を必要とし、また農産物の蓄積が貧富の差や防御施設を生んだ。こうして<自然と共存共栄して、足るを知る>縄文文化は滅んだ。
○ 項羽が劉邦に敗れたから日本に仏教が伝わった
中国で項羽を破った劉邦は、続いて匈奴征伐に動いたが、敗北。匈奴は漢から得た賠償金をもとに中央アジアへの侵略を繰り返したため、同地が混乱していった。北インドにはイラン系のクシャーナ朝が進出。ギリシア系のバクトリア王国遺民がパンジャブ地方に逃れてきて、偶像崇拝を禁じていたはずの仏教で仏像を彫り始める。
これをインド人は禁じようとしたが、異民族であるクシャーナ朝が仏教美術(ガンダラーラ美術)とパーリ語からサンスクリット語への仏典翻訳を許したため、仏教の世界宗教化が進み、結果的に日本に仏教が伝わった。
○ イギリスが宗教弾圧をしたから、日本は鎖国政策を転換することになった
絶対王政を確立したスチュワート朝はピューリタン弾圧を敢行。
新大陸に渡ったピューリタンによって作られたアメリカ合衆国はマニフェスト・デスティニーの名のもとに西漸運動を開始する。
西海岸にたどりついた産業革命後のアメリカ人たちは機械油にかわる鯨油を求めて捕鯨活動を推進。
その結果、日本に開国を迫った。また南北戦争後に大量の在庫と化した銃火器は、日本在住のグラバーから坂本竜馬に渡った。これが薩長にもたらされ、鳥羽・伏見の戦いで官軍側が使用した。
○ 第一次大戦後の戦後処理においてドイツに莫大な賠償金が求められたのはクレマンソー仏首相が総力戦のなかった19世紀的発想しかできなかったからだといった、興味深い考察が綴られています。
○ 日本は10万人の犠牲で日露戦争に辛うじて勝ち、満州を生命線と唱え固執して中国戦争から太平洋戦争に突入して350万人の犠牲を出し敗北した。
○ 石橋湛山は、慧眼を持ち太平洋戦争の敗北を予言した。石橋湛山は満州を棄て、朝鮮、台湾に自由を与える事を主張した。遅ればせながら、今の日本は石橋湛山の予言した通りである。
2018年9月1日土曜日
「世界史で読み解けば日本史がわかる 神野正史」を読む。 著者は縄文時代から太平洋戦争までの日本史の事象を取り上げ、単に日本国内だけの出来事としてとらえず、そこへ至るまでの世界情勢の影響をつまびらかにしていきます。 ○ 大陸からの農業伝来が日本人の自然観を大きく変えた。 1万2000年も継続された縄文時代は、原始的で遅れた未開社会だったわけではなく、変革を必要としない平和で豊かな時代だった。身分差を表すものや外敵から村落を守る防御施設も出土していない。 しかし大陸から渡来した弥生人が、共同体全体の一斉作業を必要とする農耕を持ち込んだため、指導者である「王」を必要とし、また農産物の蓄積が貧富の差や防御施設を生んだ。こうして<自然と共存共栄して、足るを知る>縄文文化は滅んだ。 ○ 項羽が劉邦に敗れたから日本に仏教が伝わった 中国で項羽を破った劉邦は、続いて匈奴征伐に動いたが、敗北。匈奴は漢から得た賠償金をもとに中央アジアへの侵略を繰り返したため、同地が混乱していった。北インドにはイラン系のクシャーナ朝が進出。ギリシア系のバクトリア王国遺民がパンジャブ地方に逃れてきて、偶像崇拝を禁じていたはずの仏教で仏像を彫り始める。 これをインド人は禁じようとしたが、異民族であるクシャーナ朝が仏教美術(ガンダラーラ美術)とパーリ語からサンスクリット語への仏典翻訳を許したため、仏教の世界宗教化が進み、結果的に日本に仏教が伝わった。 ○ イギリスが宗教弾圧をしたから、日本は鎖国政策を転換することになった 絶対王政を確立したスチュワート朝はピューリタン弾圧を敢行。 新大陸に渡ったピューリタンによって作られたアメリカ合衆国はマニフェスト・デスティニーの名のもとに西漸運動を開始する。 西海岸にたどりついた産業革命後のアメリカ人たちは機械油にかわる鯨油を求めて捕鯨活動を推進。 その結果、日本に開国を迫った。また南北戦争後に大量の在庫と化した銃火器は、日本在住のグラバーから坂本竜馬に渡った。これが薩長にもたらされ、鳥羽・伏見の戦いで官軍側が使用した。 ○ 第一次大戦後の戦後処理においてドイツに莫大な賠償金が求められたのはクレマンソー仏首相が総力戦のなかった19世紀的発想しかできなかったからだといった、興味深い考察が綴られています。 ○ 日本は10万人の犠牲で日露戦争に辛うじて勝ち、満州を生命線と唱え固執して中国戦争から太平洋戦争に突入して350万人の犠牲を出し敗北した。 ○ 石橋湛山は、慧眼を持ち太平洋戦争の敗北を予言した。石橋湛山は満州を棄て、朝鮮、台湾に自由を与える事を主張した。遅ればせながら、今の日本は石橋湛山の予言した通りである。
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